metal box

年の瀬も迫り、来年の年賀状も入稿し終えたから、もう今年も終わった様な気になっている。


昨日はずっとやりたかったオーディオのケーブル周りの掃除とスピーカーケーブルのYラグと新しいジャンパーケーブルに付け替えた。
ロジウムメッキのYラグにしたところ、明らかに情報量の細やかさに差があり、それは端子の掃除のおかげなのかも知れないが、膜が一枚剥がれたような感じになって、好ましい。
しかしながら、本やらネットの情報でシステムのこまごまとした所を触っては悦にいったりしているのだけども、果たして自分が聴き分ける耳というものをを持っているのかは甚だ疑問だ。録音の悪いレコードも良く聴こえるのが良いシステムではないわけで、昨晩聴いたピンクフロイドの原子心母の英国盤がどうにもモッサリ聴こえるのは何処に問題があるのか。こういうナローな音を狙っていたのか、いやただ単に所持する盤の鮮度が低いともいえる。これはこちらの懐具合の問題でロジャー・ウオータースに落ち度がある訳では無いので更に問題は深くなる。SACDでリリースされた「狂気」の音質を考えたらこんなものでは無いと思うのでやるせなくなってしまう。
ふと気付く。もう何か取り返しの効かない事になってしまっているのだと。何を自分はやっているのかと。システムを追い込むとか、盤の鮮度がとか、自分は何様なのだらうと。何を聴き分けるんだ?本末転倒。「追い込む」なんて嫌な言葉だな。
そんな時いつも思う事は昔、ジョン・ライドンがmetal boxをリリースした時「最高のシステムで聴いてくれ」と吹いていた事だ。キース・レヴィンのトラヴィスビーンの鉄のギターの音色とウーブルのオベイションのマグナムベースから鳴らされるダビーな低音をきちんと再生出来る事が前提だという、唾を吐くのがマナーだったかつての自分の支持者達の懐を嘲る意味の皮肉でもあったと思う。タンノイ辺りのどでかいSPでキースのキリキリ鳴るギターを聴きかえしていたのだろうか。ライドンはオーディオマニアだったらしい。
この年で、演奏者の本意はどんな粗末なもので聴いても伝わるのだ、再生機じゃない、などと言う気は毛頭無い。ソフトに廻していた額を幾らかハードに投資してみる事で気付いた事が更にソフトの充実となったと言えば分かり易い。増え続けるレコード棚を見ながらそう自分に言い聞かせているとも言える(笑。DJ仕様だったテクニクスのSL1200をやめて2台売っぱらってフェーダーも外して、ebayで落としたガラードを修理に出して、針圧をキチンと取り直してから初めて乗せたレコードはmetal boxの45回転12inchだった。そういうふうに決めていた。1曲目のアルバトロスをかけたらあまりの低音に木造のガラス窓と頭の中とがビリビリと音立てて盛大に揺れた。こういう事が判るからオーディオ遊びはやめられない。

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Suicide Romeo" Pictures" ZE, Island /ILPS 7010, ILPS 7010/UK:1980
仕事の打ち合わせで出かけた駅の近くのレコード屋で買った。正確に言うと積極的に外での打ち合わせを入れてその近所のレコード屋での探索の後でちょこっと仕事しているという方が近いのか。いや断じてそういうよこしまな事ばっかりでは無いです。
ZEからリリースされたSuicide Romeoはよく見かける盤だったが、何かでenoのファーストソロのhere comes walm jetsの1曲目"Needles In The Camel's Eye"のカヴァーが入っていると知った。それが聴きたくて買ってみた。今回のZEの紙ジャケCDリリースでコントーションズ辺りは出るのだがこのへんは微妙だ。リジー・メルシエ・デクルーの一枚目「press color」はリアルタイムで買った。時代を越えた盤だと思う。女子をプロデュースしなくてはならないという任務をもし与えられたらリジーをまるパクリしたい。もう既に有るか。4枚目のチェット・ベイカーとの競演盤もよく聴いたな。
さて、Suicide Romeo。ZEは元々オーナーが仏人なので彼等も出たのだろう、くらいの内容だった。よく言われるtalking headsとの類似性も無くは無いがむしろオーガスト・ダーネルサヴァンナバンドの匂いもするギターバンドだった。微香性ではありますが。enoのカヴァーは無難な感じで特に引っかからない。余談ではあるが日本のサロン・ミュージックの一枚目の「muscle daughter」の方がこのenoの曲と似ていると思う。如何でしょうか。