生き方のヒント

日曜日、渋谷タワーレコードにて。
竹村 卓 著『ア・ウェイ・オブ・ライフ〜28人のクリエイタージャーナル---LET’S DO EVERYTHING WRONG RIGHT ?!!』の出版記念トークショーに出かけた。


著者の竹村 卓氏と写真家の平野太呂氏、ブレックファストのvo森本氏の3人が制作秘話を語る、みたいな事でした。まあ基本グダグダだったのだが、緩く和んだ話が心地よかった。
著者の卓君とはもう10年以上前に仕事で世話になって以来の付き合い。彼がやってきたいままでの仕事にケリをつける事が出来たともいえるこの本を、やっぱり暖かく迎えてあげたい。


初めて会ったのがLAで、彼は僕達の仕事のコーディネーターだった。お互い若かったので仕事が終わったあとにもじっとしていられず、地味にLAを徘徊したりした。とはいえハメを外すとかではなく、彼が好きな郊外のコーヒーショップで深夜までダベったりとか。

その後、何回かLAを訪れた際も、いつも付き合ってくれた。シルバーレイク辺りの小さなライブハウスにデイビー・アレン(!)の演奏を聴きにいったり、有名なモンド全開な本屋(amok books)に連れて行ってもらったりだとか。で、何時だったか、ある時、彼が一本のビデオを持って来て貸してくれた。それが確か「MOUSE」だったか「The Woods」だったか、とにかくあまり良く覚えて無いのだがスケーターがただすべっているムービーを観た。最後にボードで森の中に消えて行くシーンが印象的で、イリーガルな行為とは少し違う、ロマンチックというかロードムービーの様な物悲しさがあって、少なからず引っかかるものがあった。あきらかに今居る自分の町とは違う町に住み、違う時間や決まり事がある事をアイデンティファイ(こういう物言いが一番ぴったりなので)したというか。スケーター文化といえば身もふたもないが、著者はそれを体現するひとだったし、それは意外にも自分と一面だけども、ちょっとリンクしてるんじゃないかとも思った。

元々著者は東京の山手育ちで、自分の義弟と学校が同じ事もあって、なんとなく彼の立ち位置は分かる。自由な校風で有名な東京の西のほうの学校の出身者の独特な感じ。田舎出の自分はすこし羨ましくもある飄々とした感じ。「スケボーする」という超個人的な行為で知り合う「個」と「個」。ゆえにそのコミュニティが多岐にわたって成熟しているのは当然なんだろう。この本の中の彼等はスケーターばかりではないが、著者の眼鏡に引っかかる我の魅力をもったやり方のひとたちばかり。それが一つの指針となってこの本は作られている。多分に巧くコミットできてないひとたちばかりだから魅力があるんだろうな。

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そのトークショーで著者は巧く喋れてなかった。でも巧い喋りは嫌だ。巧く喋りたくないと思う。饒舌な表現が無味乾燥にきこえることを恐ろしいと思う。
「この本が、生き方のヒントになればいいと思って。」
なかなか言えない言葉だな。そう訥々と緊張しながら話す彼はこの場から早く逃げたい風だった。そういう輩は好きだ。


レイモンド・ペティボーンにツイストことバリー・マッギー。
今をときめくペインターにも取材している。




当時バリー・マッギーのガールフレンドだった画家のマーガレット・キルガレン。もう亡くなってかなり経つ。バンジョーを弾く彼女。いい写真。一度彼女とほんの少し話す機会があった。ロバート・クラムの音楽の話をしたのかな。日本だと何処でCD買えるのかなんて。


そういえば10何年前、一番最初に卓君と仕事した、明日日本に帰るんだという日に彼は一枚のCDをくれた。トミー・ゲレロの最初のアルバムだった。まだ今のようにbig in japanでもなく名前すら聞いたこともなかったが、自宅で聴いてみたら、すごく良かった。
あの宅録ぽいウエットな一枚目のアルバムは、おしつけがましくなく密やかにそこに居る風の佇まいで、この本の匂いとまったく同じだ。