私的名演見学忘備録 :ザ・スペシャルズ

また今朝も地震で起こされる。
さっきふと思い出したのだが、昔映画館のなかで地震に遭遇した。
恵比寿ガーデンシネマだったか、アルトマンの「ショートカッツ」を観ていて、ちょうどクライマックスのシーン、ロスアンゼルス地震に襲われる場面で、まったく同時に東京も地震がシンクロしたのだった。
まわりの人達もきょろきょろと辺りを見渡しながら、気まずいような、今凄いことになってたですよね!みたいな暗黙の事態を皆無言で共有した事を思い出した。
呑気な事言ってる場合じゃない。亡くなられた人もいるんだから。

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このところ日々忙殺されており、このブログの更新も滞っていた。いろんな事がぼんやりあったりもしたが、やっぱり鮮度が落ちるというか、時間が経つとあまりリキが入らないものだな。とはいえ、specialsの来日公演はすごく良かったのでやっぱり書き記しておこう。

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ジェリー・ダマーズとはやっぱり喧嘩しているみたいで、メンバー曰く「今のジェリーはストーンズにおけるビル・ワイマンという事だ」とかなんとか。それは言い過ぎだ。ジェリーはspecialsを「発明」したひとなのに。もうこじれすぎている模様。
後輩を車に乗っけて新木場へ向かった。駐車場からの道すがらスキンズの2人組が格好バッチリきめているのを見た。裾が短いズボンにマーチンのブーツ。トップはタイトな半袖ボタンダウンにサスペンダー。後輩曰く「あのシャツは◎◎◎◎のシャツですね」。モッド御用達のシャツだそうだ。そういう若さが微笑ましいし、正直今日は羨ましい。ツートーンで会場になんて行けない。むしろもっと爺さんになったらもう遠慮なく行こうと思います。ジェリーは初来日時のインタビューでこう言ってた。「ツートーンていうのは白黒のことじゃないんだ。玉虫色のことなんだ。」黒白、そんな短絡的なことじゃないんですね。混ざり合わなきゃツートーンじゃないのだな。エボニー&アイボリーじゃまだまだという事らしいです。先生らしい物言い(笑。

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開演前に白人のセレクターがレコードを廻す。その横で黒人がトースティング。後から分かったことは、黒人はメンバー(ネヴィル、リンヴァル?)で、白人はテリー・ホールの18歳の息子だったそうだ。どうやらテリーにソックリだったそうです。緩く会場も暖まった頃、ほぼ定刻でspecials登場。enjoy yourselfのSEでゾロゾロと初老直前の英国人(在英国ジャマイカン含)が出て来て演奏が始まった。
結論から言うと素晴らしい演奏だった。只のノスタルジアサーキットじゃなかった。ジェリー・ダマーズ不在が気にならないくらいの。よく考えたらテリーはずっと唄い続けていた訳だし、スカというジャンルはむしろ長くやることでいい灰汁が出るというものだ。
テリー・ホールは間奏の際にはくるっと後ろを向いてドラムキットの横に立つ。で、唄になるとやおら前に出て来て昔を思い出させるウエットなハイトーンで唄う。暑い中、彼は最期まで上着を脱がなかった。この感じ。性急さは無くなったが全くもってあのメバリを入れた様なシャープな視線とシニカルな変わらない印象は遠目にもしっかりと分かった。
一番印象的だったのは最期に演奏したenjoy yourselfがやけに生々しかった事。レコードを聴いていても分からなかったこの唄の意味を30年経って実感する。enjoy yourselfとは強烈な決意表明だったのだ。ちょっとじんとした。
もう一度彼等が来る事があれば家内を連れていこう。帰ってから興奮気味に話をすると行きたかったなあ、なんて。そうだよな、うちにある「more specials」のcdは彼女の嫁入道具だったのに(笑。「彼女ががっかりするようなライブだったら嫌だから」なんて思った自分を悔やんでみたところで。
罪滅ぼしに翌日昔の2toneのDVDを一緒に観た。bad mannersの曲を口ずさむ強者だったのだ、うちの奥さんは。男前だ。

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ライブが終わって後輩と駐車場まで歩く道のりもまだ興奮していた。生暖かい海風が吹く、夢の島での一夜でした。