からっぽの世界

台風が来るとワクワクすると家内に言うと淦ら様に嫌な顔をされた。
台風というより風の強い日が好きなのだ。正確に言うと風の強い夜だな。それは子どもの時からずっと。ケイト・ブッシュの「嵐が丘」が脳内リピートする。亡霊となったキャシーがヒースクリフの元へ戻って来る。山岸凉子の怖い漫画とかともイメージは重なって凧に乗った怖い妖精みたいななにかが飛んでいるのだ。風の強い日には、ほんの少しの自分の中のゴシック嗜好が出てくるのか。

                                                                                                                                                                  • -

夕方、車でジャックスのCDを聴きながら打ち合わせに向かった。大きな音でかけても文句が出ないので車は自分の中のもうひとつの音楽室だ。
ジャックスは今更ながら聴く度に新鮮な発見がある。デーモン&ナオミが「遠い海に旅に出た私の恋人」という曲をライブでやっているのを観たが、早川義夫の歌詞を日本語で忠実にやっていた。これはやっぱり言葉が何語でも響く人には響くんだろう。聴きながらマグリットの絵に海をめくって覗いているような作品があるが、あれを想起する。

「からっぽの世界」というタイトルは英文タイトルがvacant worldなのか。sex pistolsのプリティ・ヴェイカントは超からっぽという意味か。東西を問わず頭の中の空き地について皆唄っている。空洞です。そういえばマリアンヌの歌詞は「嵐の晩がすきさ」というくだりで始まる。暴風雨の六本木の裏辺り、車走らせていて、ああ重なったなあ、なんてことをぼんやり考えながら帰り道を急いだ。