ミルウォーキー・アット・ラスト!


ルーファス・ウェインライトの昨年のツアーのDVDミルウォーキー・アット・ラスト!」を手に入れて、先日家内と観た。といってもあまりに濃いので前半半分だけ。
その濃密さに半分で満腹になった。例えるとラーメン二郎だな。ルーファスはスイーツ・バイキングだと言って欲しいだろうが、アンタは二郎だ。また体調整えて半分観る事にした。


昨年の日本公演、日比谷国際フォーラムのCホールは非常にいい選択だったと思う。この小さなホールで演れた事でルーファスの音楽の全てが、良い方に作用したのではと思った。
10年前の渋谷クアトロはデビューアルバム出て半年くらいだったかな? レニー・ワロンカーが制作にいくら時間かけてもいいと言ったとか、ヴァン・ダイクやバーバンクというワードが盛込まれたプレスリリースに踊らされて買ったCDが事の他良くて、トム・ノースコットや若きノエル・ハリスンみたいなものを想像してたかも。グランドピアノとガットギターとコーラスマイクが一本。 クアトロの邪魔な柱の後ろで観た。その時びっくりしたのは、照れなのか、英語に堪能でない自分でも分かるお姉なMC。妹のマーサ・ウェインライトと2人だけ。それも大半は1人で東洋人相手のステージ。バンドだってこの時点で連れて来れるようなメンツじゃなかった。ジョン・ブライオンは既に売れっ子だったし、太鼓はジム・ケルトナーだったし。
最高だったけど、レコード会社お披露目のプレショーみたいだったなあ。でも捨て曲といわれるものがこの人は無い。それは1stからずっとそうです。

で、10年が経って、国際フォーラム。
全員渋谷の中古レコ屋の客だったろうクアトロにうってかわって、宝塚の客層と被るまでになった国際フォーラム。とはいえ本当にハートマークが充満してました。開演前に流れるBGMが、「成功したけど不遇」みたいな人か(ダスティ・スプリングフィールド、ビル・ウィザース、モリッシー(笑)、あとは本当のgoodies、古いドゥーワップ等、素晴らしい選曲でした。
始まりとしては最高の、ボウイの"oh you pretty thing"がフェイドアウトしてショウは始まった。
新譜中心で、過去のアルバムからのキラーな選曲で2時間半。 大きすぎないホールが故に、マイク無しで声が届くし、客の感動がダイレクトにバンドにも届く。それがすべて良い方に影響して、真面目な多幸感で会場は満たされていたのだ。
◉以前にも日記に書いた事を、もう一度引用。

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昨年のルーファス・ウェインライトのライブの後ろにも大きな星条旗があった。ストライプは灰色。いろんな大人の事情がある米国は加色混合で限りなくグレーに近づいている。州の数の星は全て無かった。かわりにルーファスの好きなものがラメで 形作られて、ちりばめられていた。指輪、雪の結晶、蝶、鳥、トンボ。ルーファスは銀嶺の星ジュディ・ガーランドのトリビュートという使命を背負って、starをreleaseせよ、と唄っていた。旗の中の星は放り投げてしまったよというダブルミーニングじゃないか!

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突出した才能は10年後の今日もまったく変わることなく、変わったのはその才能を発見し、理解し、愛でようとする人達で小さいながらもホールが満杯になった事でした。