人体には影響はなんらありません

本日MRIなるものを初体験した。
もう若くないので定期的に検診を受けている。2ヶ月に一度くらい血と尿を採る。いろんな数値が上がった下がったとやっている。数日前に受けた際、最近どうですか?そういえばおかしな頭痛がありますね。それは調べときますか?お願いします、という経緯でMRIをやってみた。
閉所恐怖症はありませんか?と聞かれ、ありませんと答えたのだが、今日を境に閉所恐怖症になったかもしれない。それくらい相当に不思議な体験だった。まず待ち合い室で待っている時から尋常ではないビープ音が聞こえる。こういうものはハイテクな筈なのに、非常にローテクな五月蝿さが洩れている。インダストリアルノイズ(笑。
身につけた一切の金属を外す。強力な磁力がかけられるそうだ。まず耳をハイテク耳栓で塞ぐ。カール・ラガーフェルドの様な眼鏡をかけさせられ、仰向けに寝かされ、大仰なマッシーーンの中にゆっくりと入って行く。welcome to the machine. ピンクフロイド。いや、エルドンが近い。耳栓のせいで身体の鼓動しか聞こえない。まず思い出したのがキューブリックの2001年のあのクワイエットなノイズというか、静かにゴーゴーいう感じ。もうここで完全に感覚は非日常的で、クワイエット・ストームという言葉の正確な意味は多分違うが、静けさの嵐がこれから始まる強力な磁気による人体の切断面の記録を...以下略。兎に角、具体的に考えると、怖い!


急にビープ音がアナログシンセの如く鳴りだす。思い出したのはこれ。


The Normal " Warm Leatherette" MUTE001/UK/Released:1978


繰り返し鳴らされる音で朦朧としてきた。すこしづつ音が変わる。エラー・システム!?唾呑む音が大音量で鳴る。手先が痺れる。すわ!磁力か!? いや、ただの腕組みの痺れ。

ある意味凄く音楽的な体験だった。ここにはリゲティもケージもシュトックハウゼン小杉武久も在る。ホワイトハウスもピロレイターもキャブスもディスヒートも(笑。


時間にして15分。結果は後日。人体には影響はなんらありません、みたいな事が書かれた更衣室で着替えて、支払いを済ませて病院を出た。ちょっと興奮して自転車を立ち漕ぎで飛ばして、そういえばこの近くに小洒落たベーグル屋があったな?※ここ→(マルイチベーグル)明日の朝飯に買って帰ろう、家内が喜ぶな?とか考えながら北里病院の裏出口の階段脇を自転車で降りる。思ったより急でブレーキをかける。前ブレーキが効きすぎて後ろの車輪が浮いた。ドンガラガッシャン。

肩が痛い。右足膝も強くぶつけた。グレーのキャノンデールは後輪ブレーキがひんまがってタイヤが廻らない。近場の自転車屋を聞き、前輪だけで転がしていく。本日臨時休業の張り紙。無情の世界。その店の前の電柱に鍵くくりつけ、もう意地になって、小洒落たベーグル屋を目指して歩いた。傷んだ人体を引きずりながら。