独りDJ大会

ぐずついた天気なので外出はしないと家人と決めて本日はレコードを掃除することにした。埃を湿式ブラシではらって指紋やヤニやなにやらよく判らない汚れを自家製のクリーニング液で拭っていきます。10枚も磨くと手が疲れてくる。いい大人が休みの日に色々と磨くのは幸せな暇潰しだと今日思った。まあ普通相場は決まっていて、車だ。うちの車は雨晒しで白い車体がシマウマ模様になっている。そういえば昔、職場の先輩で趣味が日本刀という方が居て、週末はずっと磨いて眺めていたという怖い話を月曜日には聞かされたものだ。

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最近買った安レコを磨きながらレコードを聴いていると独りDJごっこの様になる。ダムドの"help"が聴きたくなって、隣のバズコックスの「spieral scratch」も引っ張りだす。家内が"boredom"にあわせて「ボダム、ボダム」と間の手を入れてきたので、そういえばバズコックスの”lipstick"とマガジンの"shot by both side"は同じギターリフがあるのだよと教える為にパンクのシングル盤の段ボールを開ける。
そうすると止まらなくなって、独りで小踊りしながら好きな曲を順にかける。
ストラングラーズの"mean to me"→ジャム"going underground"→リッチ・キッズ"only arsenic"→999"I'm alive"→ジョナ・ルイ"the baby she's on the street"→ポリス"so lonely"→セインツの"I'm stranded"→ニック・ロウ"what's so funny 'bout peace love & understanding"→レイチェル・スウィートの"baby"まで一気に聴く。GSを懐かしんで聴く上の世代の人とおんなじ感じだろうな。レイチェル・スウィートのはすっぱな唄声で思い出したstiffのオムニバスの中の一曲が聴きたくなって『bunch of stiff』というこのアルバムを引っ張り出す。
Jill Readという覆面歌手が唄う”maybe"という曲。元々はシャンテルズという女性グループで50年代にヒットした、女の子の切ない思いを歌った佳曲のカヴァーで、デイヴ・エドモンズが関わっている。Jill Readはyoutubeに勿論無いので、オリジナルをどうぞ。聴いてみて下さい。

The Chantels "Maybe" 1958

イントロのピアノがジョン・レノンがカヴァーしたロージーの"angel baby"を思わせる。ジョンのヴァージョンはケティ・レスターの”love letters"のアレンジを相当意識していると勝手に思っているのだがどうだろう。

そして英国人の米国音楽への憧憬を体現するかの様なこの曲を聴くと、英国で忘れた頃にポツポツと現れてはワンヒットワンダー的に、ルルであったりダスティだったりの雰囲気を纏ってチャートを賑わすレトロな女の子シンガー達が思い浮かぶ。

Duffy "Distant Dreamer" 2009
一昨年辺りにウェールズから現れた彼女、ダフィは時の人となった。英国人の琴線に触れるであろう独特な声は焼き直しでも模倣でもない何かを感じさせる。エイミー・ワインハウスのゴシップありきの話題作りより好感が持てる。日本で言うと、んーなんだろう、裏日本辺りから「喝采」級のサウンドプロダクションで、ちあきなおみの再来みたいな女の子が...違うな...。
ジャック・ニッチェなんかがやりそうな音作りは元suedeのバーナード・バトラーが書いて、プロデュースも手がけている。何かで読んだ所によると、デビューに当たっては現在のラフ・トレード・レーベルのスタッフ(役員?)でもあるジャネット・リーが相当世話をしたとか。リーと言えば我々の世代にはPILのflowers~時のメンバーである。彼女なりにサヴァイヴした結果はジェフ・トラヴィスの片腕という訳だ。多分A&Rの様な立場なのだろう。普通のオバサンの画像が有った。
今はダフィのブームは少し治まった様で彼女の噂はあまり聞かない。繊細なカントリーガールという風情の彼女はハイプに巻込まれたという事だったのだろうか。


......などと邪推を巡らせていたら夕食が出来たよとの事で、独り会はお開きとなった。