私的名演見学忘備録 :the undertones

今日みたいな天気の悪い月曜日を好きな人は居ないだろう。仕事がはかどらないのを天気のせいにしている。で、今日はパンクのレコードばっかり聴いている。正確に言うと70年代パンク。エンジェリック・アップスターツとか今聴くといい。当時バカみたいだと思ったけど。スカっとします。

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昨日は雨の中を高田馬場のライブハウスに出かけた。アンダートーンズが来日。フィアガル・シャーキーがいないアンダートーンズを観に行く。フィアガルはもう音楽ビジネスからは足を洗ったらしく政治家に、なんて噂も聞いた。あの震える声が無いパンクアンセムは果たしてどうなんだろうとボンヤリ自問しながらロブスターのピンバッジをセーターの胸に付ける。もう一個隣にアップルレコードの青いリンゴのピンバッジも付けて出かける。
若い連中とアイルランド人(多分)とそんなに若くない自分みたいな輩とで埋まったライブハウスはDJのかけるドーナツ盤でちょっとずつ暖まってくる。fragmentsとjuniorという日本の2バンドの演奏もとても良かった。

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アンダートーンズのヒットソングは北アイルランドの紛争と意図的に距離を置いているとよく聞くが多分にそれはそうせざるを得ないという過酷な状況があったのだと思う。敢えての忠誠心を持たないという。「小声」というバンド名は実は逆説的にポリティカルな姿勢を言い得た、とてもいい名前だと思う。数百年に渡った統一という曇り空の下で暮らす彼の国の鬱屈を晴らすにはシンプルでかつキャッチーなリフと黒ビールが一番効果的だったのだろうか。"teenage kicks"という曲が持つ魔法はそういうものだと改めて昨日聴いていて思った。
あのコードが鳴らされた瞬間に店がワッと揺れた。彼等のヒットソングは沢山あるのだがやっぱりこの曲は特別だった。不思議なマジックが絶対的に在る。ジョン・ピールがこの曲をベストソングだという意味はすごくよく理解出来る。女の子の事を唄っている他愛もない曲の向こうに見え隠れする、歳を取っていくと消えて行く何かがこの曲を聴いている時だけは取り戻せる様な刹那的な感覚と、政治に対するアンチである事の生々しさを感じ取ったのだろう。これがナショナル・アンセムに成る可くして成った理由だと思う。

オリジナルメンバーのフロント3人は演奏も素晴らしく、ちっともノスタルジックな感じではなかった。彼等のファンだったという新しいヴォーカルのポールは代役というよりサビを一緒に唄う我々な訳で、それを誰が悪く言えるのか。そういう事を否定する様には成りたくない。



The Undertones " Teenage Kicks" 1978