Lips That Would Kiss

先だっての猛暑が嘘の様に、穏やかな秋らしい風が窓を開けていると入り込んでくるので、半袖は少し肌寒い。朝の明るい光が懐かしくなる。勝手なもんだ。

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The Durutti Column " Lips That Would Kiss"/FAC BN2-005/Belgium/1980


三軒茶屋の中古CD屋の一角にわずかばかりのレコードが置いてあって、そこからポロっと出て来たドゥルッティ・コラムの12インチを買う。
新星堂が当時確かUKオリジナル、ファクトリー原盤に帯だけ付けて売っていたもので、定価1400円と記されている。CDメインの店なので、まあ700円の値付けは中古の12インチしては妥当だと思ったのだろうか。ここから平日10%割引でした。いい買い物したなあ。
日が短くなった今の夕方にはぴったりのレコード。7インチを持ってはいたけど12インチ盤はやっぱりいい音がするのである。イアン・カーティスのレクイエムとして書かれたとか("missing boy"もそうだったか?)確かそんな話だった。マーチン・ハネットの--コカインにて酩酊する--指で滑らす卓の記録としても最上の物だろうし、ポスト・パンクの振れ幅の、片方の切っ先に位置する楽曲でもある。多分もう片方の切っ先は”we are all prostitutes”か"Health & Efficiency"か"Zyklon B Zombie"かな。とにかくそういう戯言がポンポンと湧いてくるくらいに" Lips That Would Kiss"という曲はヴィニ・ライリーという人の脆さと辛辣な部分が少しの希望の気配を伴って爪弾かれている。


曲タイトルはT.S.エリオット詩の一片から取られているとの事で調べてみる。以下 "The Hollow Men(1925) T.S.Eliot" の部分抜粋。

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Is it like this
In death's other kingdom
Waking alone
At the hour when we are
Trembling with tenderness
Lips that would kiss
Form prayers to broken stone.


死の彼方の王国のように
我々が優しさに震え一人で目覚めるとき
唇は壊れた石像への祈りを形作るだろう

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これを読むにやっぱり、この曲はイアン・カーティスへのプライベートな書簡だったのだろう。勝手に封を開けてしまってすみませんという気分にちょっとなった。