EP-4 10.7

備忘録。
やっぱり書き記しておいたほうがいいか。このプログラムを観るために先日ドミューンに初めて応募して、スタジオまで出向いてきた。

DOMMUNE/10.7「EP-4/Reawakening the City! 都市を再び覚醒させよ!」
出演:佐藤薫EP-4)、毛利嘉孝地引雄一テレグラフ・ファクトリー)

80年代頭を京都で過ごし、トンがっているであろうものを無邪気に無自覚に喰い散らかしてきた身としては、EP-4というワードには今でも敏感になってしまう。チャラチャラと河原町辺りで遊んでいたらば、5.21計画というプロジェクトに、気がつくと自分も一兵卒として加担する事となってしまっていたのだ。
佐藤薫という希代の策士を皆は敬意と愛情を込めて佐藤のオッサンと呼んでいた。シン・ホワイト・デューク期のBowieにも似た近付き難いその独特の雰囲気を、世はカリスマと呼ぶのだと当時思った。

                                                                                                                                                                • -

ジトっとした怨念めいた(笑)空気が会場に充満する中、ほぼ定刻通りに番組は始まる。甲斐甲斐しく動く主宰の宇川氏のテキパキした所作に感心しながら皆あの象徴を待つ。毛利嘉孝氏と地引雄一氏のトークで少し引っ張った後、遂に、客間を抜け、リヴィング・レジェンドは登場した。いや「降臨」が近いか。なんとkeyの川島バナナ氏も同席する事に。うわー、unit3じゃないですか(笑。

例えばライアル・ワトソンであるとか工作舍とか、そういったワードに周囲を包囲される中、EP-4の音楽がはたしてアカデミックなものかといえば、むしろその逆の非常にフィジカルな趣をもって若造は当時とらえていた。演奏が進むにつれファンクネスが熱を帯びる事無く、何か情緒のようなものが一面に漂うライブの現場に興奮したことを思い出す。ギクシャクしたリズム隊とモヤが立ちこめたようなイコライズされた声を引っ掻くように、ミストーンの塊のようなフェンダームスタングの音がギャアギャアいう。そこにマイケル・バインホーンを思わせるきらきらとした鍵盤が会場をブァーーーと覆う。高揚したあの現場が今でもすぐに頭に浮かぶ。
後追いでは多分掴みにくいと思うが"音楽の現場"は非常にマッシヴであった。電化マイルスやマテリアルに呼応した音楽が京都で鳴っていた。個人的にDCPRGがちっともグッと来ないのは某キクチさんが情緒に欠けるからだとやっぱりEP-4を思い出して再認識する。

                                                                                                                                                                • -

佐藤氏のこの20年間の所在に関してはいろいろな噂を聞いた。しかしほとんど当時と変わらぬ佇まい。皆が生暖かく慈愛の表情で氏を見守っている。単純に自分も不思議な高揚感に囚われる。再始動の話は自分も色々な所で聞いた。まずはBANANA氏とのduoが来年春だそうだ。
不穏な時代は崩御大赦のあともずっと続いているわけで、佐藤氏のテーゼが今もってなんら違和感無く実働可能な事を喜ぶべきなのか憂うべきなのか。先日も金属バットで両親をというニュースをネットで見て、またいろんなところに引き戻される。トークショウの中で毛利嘉孝氏だけは口を酸っぱくして、音楽シーンではなく「運動」であったと繰り返していたが、それはとても良く判る。只の人前に出てこなかった音楽家が再活動を始めたという事象だけではないから、これだけネット上で妙な熱を帯びているのだと改めて思う。


このブログアップ用に自分で撮った昔のEP-4の写真を引っ張り出して眺めてみる。
毛利氏も多分に居たであろうか、会場写真。グリム・スキップの女の子達と撮った写真も出てくる。うわー俺若いな...。恥ずかしいぞ、おい。
あの後何故、佐藤薫は深く潜ったのか。毛利氏の著書「ストリートの思想—転換期としての1990年代」にヒントはあるかもしれない。

                                                                                                                                                                • -