英国日記_2

12月2日
軋む床でも我慢してここを宿にする理由は朝食が旨いからである。




ザ・フーのsell outのジャケでロジャーが溺れるハインツのビーンズみたいな赤い豆が旨い。

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朝のBBC1の番組でのトップニュースは英国を覆う雪の話題。どうやらガトウィックとかの空港は閉鎖だそうである。次に話題は2022?の英国ワールドカップ招致失敗について。ベッカムと今、時の人、ウィリアム王子が二人、愕然とする映像が流れている。ロシアはWCを買った!とかMCはヒートアップしている。今朝はこの国の人達にとって何ら良い事のない日の始まりみたいである

今日は友人のDと2年ぶりに会う。一日市内観光に付き合ってくれるとの事でギャラリーとかレコ屋を廻るのだ。11時に件のレコ屋、M&Vエクスチェンジ店内で待ち合わせる。Dがやってくるまで興奮しながらもツンデレ気味に棚を探る。まあほぼ全て英国盤なんで、ちょっと嬉しくて目眩がする。
レコードもロンドン市内に於いては左程安いものではなくまあ4〜5ポンドが最低ラインであろう。70枚程が手持ちのスーツケースに入ると想定して(というか実際に出発前にやってみた)総量15kg程度、ヴァージンは23kgまで許されるのでそういう諸々を考慮しつつ抜いていく。2階のレア盤階に移動して目に入ってくるのは壁出しのフー、キンクスプリティ・シングスの貴重盤。ブラウンズウイックの“my generation"がおいでおいでと呼んでいる。うー。5ポンド盤のウン10倍のmono盤。若い頃のジョン・サイモンにそっくりの店員に検盤を頼む。こんな良い状態はなかなか無いよとの常套句をうんうんと聞きながら、マトリクス見たり、裏、落書きあるなあとか諸々の思惑を巡らせながらも壁に戻してもらった。
そうこうするうちにDがやって来てヤアヤアと言いつつ店を後にする。彼は友人のフラットからここまで雪のせいで2時間かかったとかで「コノ国はダメな国デス」と日本語で呟く。多分杉並あたりから代官山?まで2時間という感じなのだろう。日本はキチンとオーガナイズされているから左程の事ではガタガタとは崩れない。そんなことないよ、雪は嫌いじゃ無いから楽しいよといいつつも久しぶりに芯から冷える寒さを体験しつつ我々はチューブに降りて行く。

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Dがコーディネイトしてくれるコースは、お互いデザインの仕事に従事するならこれ楽しいよねという素敵なものであった。まずサヴィル・ロウの中にあるギャラリーhauser & wirthのルイーズ・バージェスの"The Fabric Works"に連れて行かれる。☞http://www.hauserwirth.com/exhibitions/743/louise-bourgeois-the-fabric-works/view/
六本木ヒルズのオープニングにも居た蜘蛛の立体彫刻でも有名な女流作家。所謂英国最高の仕立屋の敷地内でアパレル寄りに展示をしてみせたもので、川久保玲の事など頭に浮かべながら白い壁に貼られたカラフルな蜘蛛の巣を眺める。

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数分歩いてピーター・ブレイクの展覧会に移動する。☞ http://www.waddington-galleries.com/exhibition/current/
ワディントン・ギャラリーという会場に御年いくつなのだろう、若い気持ちと狡猾さ、シニカルな諧謔を携えたピーター・ブレイク作品が並んでいる。オマージュがテーマの近年作品展示。何か英国ポップ音楽の素(もと)がここに居て、襟を正したくなるような、hatsをoffしなくてはならないようなそんな感じ。ボンゾズが猛烈に聴きたくなるです。

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次にナショナル・ギャラリーに移動してブリジット・ライリーの展示を観に行く。☞ http://www.nationalgallery.org.uk/whats-on/exhibitions/bridget-riley

ライリーのオプ・アートが巨大な展示室いっぱいにある。くらくらする。ホルベインなんかのコッテリした絵画の隣の部屋に目眩(ヴァーティゴ)あり。Dが「中世絵画、あまり真剣に観ないほうがいいよ。ものすごく体力取られるから」と言う。英国音楽の深い森の如し。

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クリスマスで浮かれる街を出て明日からの予定を宿のカフェにてDと立てる。明日この交通機関が麻痺する英国を鉄道で西に移動するのだ。ブリストルを越え、ウエールズとの間にあるビーチ近くの保養所で3日続く”Xマス前の悪夢"というタイトルのイベントに行くのだ。
☞オール・トゥモローズ・パーティーズ@マインヘッド http://www.atpfestival.com/events/godspeednightmare/lineup.php


今日予定していたcafe oto ☞http://www.cafeoto.co.uk/programme.shtm でのジョセフィン・フォスターを潔く諦めて近場のアラブ料理店で夕食をとった。



串に刺さったチキンとアラビカ米を薄いベルギービールで流し込んで、明日に備える為早々にDと別れた。
その夜TVでは、何故WCは我々の手から逃げて行ったのかと喧々諤々、やくみつる的なイケ好かない野郎がわーわー言ってやがった。