英国日記_3

12月3日


明日のパーティに着ていくドレスを持っていないからとドアーの後ろで少女は泣くとルー・リードが書いた曲のタイトルから取られたイベントの名前はall tomorrow's partiesという。
元々はベルセバが始めた身内(ややメインストリームからは外れるが優れたアクト)を集めたもので、バリー・ホーガンというオーガナイザーを中心に少し規模を大きくして、それはNY、LA開催まで拡がる。来年の初旬には日本でもプレ開催される事が自分が英国行を決めた後に決定した。

毎回キューレーターを決め、それらがレコメンドするアクトが3日間夜通し演奏する。泊まる施設も込みのチケット代で、その設定はある意味良心的ともいえる。但し季節外れの保養所だとか、少年自然の家的な施設で最低限の設備しか無い。日本のフェスの場合、キャンプを楽しみにするだとか、誰が出ようと必ずその場に毎年居る事に重きを置くような事であれば多分ATPは少なからず不満に思うであろう。但しそのキューレーションが嵌るならば夢のようなタイムテーブルで進行するのである。デレク・ベイリーとサン・ラとトニー・アレンとトータスが続いたりするんですよ!

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今回はゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー(GY!BE)が再始動&キューレーションと聞き、即決でこの極寒の英国に行く事に決めた。もし自分史の様なものを恥ずかしげもなく晒すとしたらGY!BEが00年代の本丸と言えるかもしれない。最初はヘンリー・カウやR.I.O.の大所帯なポリティカルなバンドのイメージや、コミューン的なcrass風とリズム隊ダブルスタンバイのクリムゾン風?といった趣で捉えていた。ロックにポストという冠が付き始めた頃の話。
毎回日本公演全て観て、尚かつ海外まで観に出かける。デッドヘッズやフィッシュを追うファンの気持ちは良く理解出来る、但しストレートエッジでなければ疑わしいという気分に自分は嵌ったのだろうか? 彼等の全ての告発を理解出来る筈も無いが、このワンダフルワールドを疾しく思う事に加担するのは極東であろうと何処であろうと、赦されるだろうと思う。ずっと背に張り付くワダカマリを説明する様でむず痒いが、GY!BEに関してはそういう事としか言いようが無い。

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Dとパディントン駅で朝9時半に待ち合わせる。
朝飯は駅構内の売店で買う事にして物色すると餃子のでかいのみたいなパイ的な何かをを発見する。コーニッシュ・パイという中に肉やチーズやオニオンやそういうものを詰めたもので、一個3ポンドくらい。とりあえず2個買う。ここから2時間半、英国鉄道に揺られ一路西に向かう。

swindonという駅を通過した頃、Dが「この街から出たバンドを知ってる?」と聞く。アイドンノー。「XTCだよ、彼等はここの出身」ああ。セカンドの「GO2」のインナーにはswindonの地図が印刷されていたね。Dは「English Settlementが一般の英国人はベストだと言うけど僕はすこし違う」僕もアイシンクソー。ひとしきり如何に彼等の2枚目が最高作かという話を2人でする。如何にバリー・アンドリュースの鍵盤が素晴らしいかという話。Dは「多分だけど、今もアンディ・パートリッジはswindonに住んでいるんじゃないかとおもう」と言った。

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列車はtauntonという駅に着き、そこからコーチバスに一時間半揺られると海辺の町、目的地mineheadに到着する。バスを待つ間、後ろに並ぶ、病的に肌の白い学生風の男の子にDが話しかける。「どこから来たの?」「ロシアです」「ああ。W.Cup、お目出度うございます」「有り難う、でもそんなに嬉しく無い」「どうして?」「マフィアが全てを握ってコントロールする。サッカーがどうとかじゃなくマフィアが全てのオーガナイザーだ。それは皆周知の事でそれについて一喜一憂するのはどうでもいい」___超大訳ですがこういう感じ。東洋人は「hondaを知ってる??」という質問をするのは勿論やめにした。

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暫くするとバスはやって来て、髭だらけ、People in blackながら整然と列に並ぶ愛すべき類いの連中をごっそり乗せて走り出した。一本道を猛スピードで流すバスには驚く。久しぶりに車酔いをするハメとなった。