英国日記_5

12月4日

時差もあり午前中いっぱい寝てしまう。

天気が良いのだから海岸まで散歩に出かける事にした。ランチにまた同じコーニッシュパイをフードコートで一個買って5分程歩く。毎日これでも構わない。


海にカメラを向ける時いつもジョエル・マイヤウィッツの事を想う。ああ撮れればいいなと思いながらデジカメをいじるが8×10のように行く訳も無くなんともどうでもいい風景が記録されているだけでげんなりする。大雑把に言えばブログとは空の写真と食いもんの写真の品評会なので、いいですよね。


カメラの設定が絶対何か違う。風景がボンヤリしてるじゃんか。全く判らない。だって取説読まないからね。岩場の上でじっと設定画面をみる。みるだけでは何も変わらないのに。


そうこうしてたら背中から声がする。「写真...撮るの..いいかな」ん?「シャッター押して欲しいの?」「ノー。あなた撮っていいかな?」ん、ワイミー?「わたしは学生で写真作品を撮っていて...」んー、俺を。ズーイー・デシャネルみたいな女の子。
アイシーということで岩場に立たされる。東洋人「どうすればいいの」ズーイー「さっきみたいに空の写真を撮っててくれる?」___手持ち無沙汰、山の如し。
東洋人「そっちも撮っていいですかね」ズーイー「勿論。」

「素敵な午後を」「どーも」、簡単な挨拶をして別れる。波打ち沿いを黒いラブラドールが2頭ダッシュしている。猛烈に黒毛を触りたくなりフラ〜とそちらに行く。

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近くの通りのカフェまでメールチェックに出てたDと合流。
今日は先ず最初にMike Watt + The Missingmenを観る。

イギーのバックでしか観た事のないマイク・ワット。フロントマンとしても充分魅力的であった。ノーミーンズノーとかミニットメン(の人)をブッキングするGY!BEは自分なら、ヒゴヒロシや吉野大作呼んじゃったよ!みたいな感じなんだろね。

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次はBardo Pondを観る。
思ったよりVoに華があって驚く。破綻の無い演奏が心地よかった。マーキュリー・レヴとかあそこまで行けるのに何故彼等は?とも思う。

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The Dead Cをチラ見。彼等にはそれは誉め言葉なんだろうけど、余りに騒々しくて出てしまう。

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Flower/Corsano Duoというのを観たが記憶に全く無い。続けてMatana Robertsという女性サックス奏者の演奏を聴く。アイラーの"ghost"をちょっと思い出した。

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コンステレーション・レーベルのHangedupを観る。彼等のアルバムは実は全て持っていたりするのだがライヴはこじんまりしてて、音源の方が良い、なんて、それは如何なものか。当初トニー・コンラッドとの競演だったのだがコンラッドがキャンセル。至極残念。
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さて、2日目の個人的なハイライトは次のマヘル・シャラル・ハシュ・バズであった。
今回のマヘルは工藤礼子も居り、工藤冬里+大村礼子の「noise」での認識が彼等の最初の刷り込みな自分としては結構楽しみにしていた。
いつもの大所帯で打ち合わせ的な数分から既に始まっているというお馴染みのスタートなのだが何かちょっと前の方の客がザワついている。背の高いDが「あ、こどもがいるよ」と言ってそちらを見やると小さな幼稚園くらいの可愛い女の子が何かちっちゃな打楽器をシャンシャンと叩いている。果たしてそれは結局彼女を中心に据えたセットとなった。なぜなら彼女はずっとブレもせずシャンシャンと、揺れるマヘルの音楽をキープしている。それについて一過言あろう輩というのは想像するのは容易いけど、それはやっぱりどうでも良い事かもしれない。MSHBとは工藤冬里(と礼子さん)の頭の中の楽譜を再現する、数十人に及ぶ、工藤冬里が捏ねて作った何かしらが、ただ音を奏でているだけにも思えるからだ。スティーヴン・パステルも勿論今回のキューレーターのGY!BE(のエフリム)もマヘルの何に魅かれ取り憑かれているのかは僕も朧げにだけど判る。最初から最期までエフリムはマヘルの袖でにこにこしながら演奏を観ていた。

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この後、強烈な伝説のBorbetomagusを観て、

Nomeansnoもチラ見〜Godspeed You! Black Emperor〜The Exと観たけども、結局マヘルのインパクトがずっと頭を離れなかった。

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深夜のヴェニューの暗闇の中で女の子がコチラに向かって微笑みながらハローと言う。
早く部屋で眠りたかったのでハイとだけ交わして足早にシャレーに戻る。その後ふと、さっきの女の子、あれは海岸で写真を撮ってたズーイー・デシャネルだったのかと思う。Dに昼間の話をすると「そのこが撮った写真見たの?」と言う。そうか、見てないしこっちも見せてもないね。なんか感じ悪い事しちゃったね。でもさっきは酔っぱらいかと思ったからさ。うん。じゃあ明日もし会ったら「ソーリー。わたしはあなたをドランカーだと思いました。わたしはあなたをアイデンティファイ出来ませんでした」と言えばいいね、そういうとDは「うーん。言いたい事は判るし多分伝わるけどアイデンティファイじゃなく、レコグナイズだね」
「どういう時に"identifi"を使うかというと、例えば」「例えば?」
「殺人現場に行ったとするじゃない?そこで死体をみるでしょ、それでカクニンするよね。その時アイデンティファイ」
滅茶苦茶な言葉を一生懸命に駆使して頑張っております。