英国日記_7

12月6日


朝10時台の北行きの列車に乗ってオックスフォードに行かなくてはならない。
Dと近い再会を約束して駅で別れる。いろんなヘルプを有り難う。ノッティンガム・フォレストが早くプレミアリーグに上がれるよう極東から祈っているよ。元浦和の阿部が所属するレスターが地元のダービーの敵チームだそうだ。TVで試合を見てビックリしたらしい。え?なんでアベが居るの!?と騒いでも多分ノッティンガムの街で彼を知ってるのは自分だけだろうなと言ってた。

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オックスフォードには何があるか。大学があるね。あと古い街並がハリー・ポッター?の舞台みたい(実際そうなの?)とか、その程度の認識であるが何故行くのかといえばエコー&ザ・バニーメンがその日ライブをやるからである。
バニーメンを観るよ、とこっちで言うと「ああ...。んー。悪くないね、いや、悪くはないよ...」的な返答を皆がする。判るよ、でも1stのcrocodilleと2ndのheaven up hereを再現するライブだそうで、いいじゃないですか! rescueとかhappy death menとか聴ける!旅行記念に10代の若き日々を反芻。そういうのもアリでしょ? 無いの? 無いってさ。

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でも昼過ぎにはオックスフォードに列車は到着する。寒い街に降りてまず腹ごしらえは例のコーニッシュ・パイ。こればっか。ネットで予約した安ホテルにタクシーで向う。古い荘厳な街並は思うに京都みたいな印象であるがそれも果たして合っているのかは知らない。
中心地を抜けるとアジア、中東のレストランが目立ってくる。何処の国にもある光景のど真ん中でタクシーは停まる。今晩の宿に到着。出て来たのはお前に喰わせるタンメンはねえの人みたいな中華系の人であった。ああそうか。経営は中国人の夫婦なのであった。荷物を部屋まで運んでくれる。ロンドンと同じ宿代ながら部屋は3倍の広さである。バスルームがロンドンのホテルの1室くらいだから。アメニティもてんこ盛りで置いてある。オーガニックの石鹸が超山積みで可笑しい。不思議な気分になるものの懐かしいアジアの過剰な感じが居心地良い。宿選びもまあ京都で俵屋に泊まるくらいの金額を払えばそりゃまた違うのだろうが、そこに重きを置いていないからこれで充分である。

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外に出てバスで中心部に向かう。中古レコード屋に行くのだ。結果からいうと見つける事が出来なかった。不覚。行けばどうにかなると思ったが、ならなかった。HMVで人に聞いた所で的を得ることが出来なかったので潔く諦めてCDをぼんやり眺める。ケイト・モスがカヴァーガールなるブライアン・フェリーの新譜が8ポンド。それだけ持ってレジに並んだ。

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陽もすっかり落ち、雪を被った枯れ木が街頭でうっすら浮かび上がっている。不気味なくらいシンとした古い建物の庭の大きな枯木はこんな旅行者ですら足を止める程の英国臭を放つ。キーフやヒプノシスでなくともこれでアルバム・カヴァーいいじゃんと思うから、treesというバンド名は全く何も間違っていないとも思う。F.マックのbare treesやトントン・マクート、ブラック・サバスの一枚目。余りにベタでカメラを向ける気すら起きなかった。

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夕飯に何処でもいいやと入ったチャイニーズレストランはいい具合の寂れた感じとキッチュな内装であった。
店の女の子に「店内撮っていい?」のつもりが「貴方も撮ってもよろしいか」みたくなって、彼女が急に女の人になってしまった。照れた感じでシナを作る。そこからサービスが良くなった様な気がした。


酸辣湯スープとチキンの炒飯を頼む。ケイト・モスをこのテーブルに置いて、撮ってみる。ロキシーミュージックのトーン&マナーに合うかと思ったが如何せん写真が酷いのでゲンナリする。

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バニーメンを観にO2アカデミー・オクスフォードに歩いて行く。昔話で時間を潰しているんだろう同い年くらいの割とキチンとした身なりの英国人達が大挙して集まっている。可もなく不可もない前座のバンドが終わる頃、もう既に眠い。ジェットラグが襲う。そこでレッドブルである。だがしかしレッドブルが効いた試しが無い。身体に合ってないのか只の甘いドリンクである。ガクンガクン頭が落ちる中、一番後ろの壁にもたれて待つ。

スモークで真っ白のなか全くイアン・マカロックの表情など見えない中演奏が始まる。ぼんやりサイケデリックなライティングで浮かぶマックの髪型が昔と同じ時点で、ああ、そうかATPに居た皆が言ってたことは当ってるわと即座に思った。