英国日記_8

12月7日

ホテルの朝食は、気のいい上海生まれのオーナーが作るイングリッシュ・ブレックファストという複雑な構造で、いっぱい食べろ!と勧めてくれるのもちょっと違う気もするが、すごく美味しかった。午前中にオックスフォードを出れば昼には中央ロンドンに戻れる。バスに乗って駅まで。

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列車に乗って一時間少し、パディントン駅に着いた。この日は一日レコード屋を廻る予定で用意周到にグーグルマップを出力している。いつものベイズウォーターのホテルに荷物を置いて早足で出る。

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レコード屋情報はネットでいつもお世話になっているので、このブログですこしでも同輩の参考になれば良いと思う。
まずノッティングヒルゲイトのミュージック&ヴィデオ・エクスチェンジでthe whoのブラウンズウィック盤monoをやっぱり買いに。日本の友人に相場を確認してみてもまあ妥当な値段なのでこのブログのネタには良いと思う。高価な盤が並ぶといわれる2Fではあるが、ホントに珍しいモノと言うより王道の高価な盤が充実している。そりゃ新宿のユニオンあたりのほうがまだ珍しいものは在るかも。でもキチンとpub rockの7インチの有名所が1~5ポンドという部分では、欠けてたピースを埋めるというにはここは良いのです。rich kidsの一枚持ってなかったシングルとか、そういうものを買う。
roxy music「サイレン」が5枚あってそれぞれ微妙に値段に差がある。盤もそうだが先ずジャケのダメージが大きいものは安い。その5枚を全て盤見せてと頼む。店員は表示を指して「これが盤の状態が一番良くて、次が...」と面倒くさがる。「いや、盤のマトリクス番号を見たいのですまないけど」。無愛想に奥から盤を持ってくる。まあ面倒だわな。1000円くらいのものだし。ソーリーソーリーと言いながら全部見る。「サイレン」の初版のマトが何なのかは知らない。知る限りではA4B4が初版だと思うがそれより若いものがあるのか。それが知りたかった。
全部4とか6の刻印であるが一枚明らかに盤が厚いものがある。ああ、そういうのあるんだな。「アイルテイクディス」と店員に告げる。同じ事をケイト・ブッシュのファーストで頼むとまたかよとウンザリされながら奥に5枚の同じレコードを彼は取りに行かされる。

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かなり最初の店で時間を使ってしまったので、一度ホテルにレコード置きに戻り、急いでソーホーに向かう。
結局ソーホーとカムデンでリストアップした店は7〜8件あったのだが、そういうわけにも行かなそうだ。夜カムデン近くのKOKOにてダーティ・プロジェクターズを観る予定なので。もうソーホーに着くと陽が落ちかけている。まず「sister ray」に入る。新譜と中古が半々。zepのマルーン盤なんかが200ポンド以上で壁にある。ここはどちらかというと近年のものが強いかな。結局抜いたのは5枚程。そのうち一枚はBURUNDI BLACKの12インチで7ポンド。ブルンディドラムからベタなアイデアの搾取を絵に描いたような徒花盤。こんなの当時はフェイクだとしか思ってなかったが今この歳になって、ピースを埋めるのだ。のこりは3枚で5ポンドコーナーから。うち一枚はEL&Pのトリロジーの両面1U。そんなものをチマチマと抜く。

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次はすぐワンコーナー先の「revival records」。ここは少し価格が押さえてあって、尚かつ状態、品揃え共に充実してる気がします。マンフレッド・マンの「the five faces of」オリジナルmonoを15ポンドは痺れる。ボウイのジギーのマト1も購入。嬉しかったのはクレア・ハミルの「stage door johnnies」のkonk盤のマト1が安価で転がっていたこと。RCA時代のキンクス「マスウェル・ヒルビリーズ」の姉妹盤だと勝手に思っているこの名盤がいい状態で手に入った。
多分オーナーであろう老人(失礼)が「おまえさん、いいの抜いたわ、これはいい」とマンフレッド・マンの盤をひらひらさせる。sister rayの袋を見て「どうだった?」と聞くので「ソーソーでした」と返す。袋一緒に入れてもらって構わないというと「いやこっちの袋のほうがいいだろ?」とrevivalの袋に入れ直す。このひと、嫌いじゃ無いです。
店を出る際に日本人の店員さんが話しかけて来た。すこし立ち話。最近レコ屋が軒並み店をたたんでいて、うちにそれが流れて来てるんですよという話とかM&Vエクスチェンジの裏話とか面白い話を少し。感じの良い日本人の彼が居るrevivalへ皆さん是非。じゃあロンドン気をつけてと声をかけてもらって、次のソーホーのM&Vエクスチェンジへ向かった。

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もう明らかにダラダラした雰囲気のソーホー店M&Vエクスチェンジはレアなものは殆ど期待しないほうが良い。そのかわり4ポンドのレコードを大量に買う店という認識で構わないと思う。センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドのヴァーティゴ盤を何枚か、全て4ポンド。そういう類いの店だと思って下さい。


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結局もうタイムリミットとなってしまう。食事してダーティ・プロジェクターズに向かわないと。それともう手でレコード持てる限界が近い。(いつもtubeway armyっていいバンド名だなと思いながら)チューブに乗ってカムデン近くのKOKOに着く。
今、旬なバンドだからsold outである。チケットを買うよとダフ屋が彼の国と同じ光景でうろつく。満杯のヴェニューは敏感な若い連中みたいなので埋め尽くされている。TOPSHOPのフェイクファーのコートを可愛く着た女の子達。同じコートの子が何人も居るのが微笑ましいけど。オックスフォードのO2のバニーメンは今思えば男女7人なんたら物語の今の様な客層な訳で、それはD達に止められても仕方がない。
ダーティ・プロジェクターズについてはもう書かなくともだと思うが特筆するとすれば、ギターのリーダーの才気走った面白さよりも、ドラムスのハード・コア上がりのビシビシ来る感じ。あ、これ、ジョン・マッケンタイアだと気付く。マッケンタイアのドラムプレイの重要性がこのDPにも有った事が実際見た発見であった。

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クイーンズウェイ駅で降りて、夜食をSPARで買ってホテルまで歩く。
味気ないサンドウイッチを齧りながら明日はもう日本に帰るんだなと珍しくセンチな気分になる。大体において旅行の後半は良く出るシャワーとテンピュールの枕が恋しくなるのが今までだったのだが、今回はまだいける。残して来た仕事、なんだったっけ?帰ったら忘年会シーズンか、とか現実に戻される。我家の黒犬の動画をiPodで見ながら眠ったら、なんだか哀しい感じの犬の夢を見てしまい明け方に泣いてしまい目が覚める。

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帰国の朝、BBC1の番組はジョン・レノンの命日の話題でしめやかに、でもクリスマス前なのか不思議にハッピーサッドな感じで、ずっと彼の唄が流れていた。